第1回 SDGs対談を実施しました
※写真撮影のため、一時的にマスクを外させていただいております
田瀬様:
2020年4月1日に社長に就任された樗澤社長ですが、就任後のご感想はいかがでしょうか。
樗澤社長:
大役を担うことへの覚悟はしていましたが、やるべきことも就任前と変わらず、大きな心境の変化もありませんでした。これも役員のみなさまをはじめ、多くの仲間に様々な面で支えていただいている結果だと感じています。
田瀬様:
社長職を譲った側である鳥居会長は、何か変化はありましたか。
鳥居会長:
私は親心もあって、できるだけ樗澤の仕事ぶりについての情報を入れないようにしました。知ってしまうとつい口を挟んでしまいそうなので、あえて静観に徹したほうが会社もうまくいくのではないかと思っています。会社に顔を出す機会を減らし、その分、社外の方々と積極的に交流を持つように心がけています。
樗澤社長:
新体制に変わり、社内では現在新たな取り組みを進めている最中で、仲間たちもそれをしっかりと受け止めてくれています。「常識にとらわれない前向きな風土」というナカジツの良さを受け継ぎながら、企業運営に邁進していきたいです。
SDGsに取り組む背景
田瀬様:
鳥居イズムから樗澤イズム、それぞれ違った魅力を放っていて素敵だと思います。
さてナカジツ様ではここ1年ほどSDGs(持続可能な開発目標)を含むサステナビリティ(持続可能性)に取り組んでおられますが、どのような経緯があったのでしょうか。
鳥居会長:
近年は「私から新社長へとバトンを受け継ぐ世代交代の時期が遠からず来る」「その流れを自ら作っていかなければならない」という使命感を持ち、数年単位で新たな社長を育て上げる計画を考案していました。
その新社長と会社・組織がうまく連動するためのきっかけになる“何か”を探して、雑誌や書籍を読んでいて知ったのがSDGsです。その頃、田瀬さんが講師を務められているセミナーの開催を知り、「これも何かの縁」と樗澤とともに参加しました。そのセミナーの中で、SDGsは「2030年までに問題解決すべき数々の目標」を掲げた宣言であると田瀬さんが仰っていたのですが、実は我々ナカジツも「2030年までに売上高1,000億を達成する」という目標を掲げています。「2030年」というゴールがリンクしていて、より身近なことだと感じるようになりました。
1987年の創業以来、ナカジツはこれまで仲間で一致団結してがむしゃらになって走ってきました。ですが30年以上が経過し企業規模が急成長。仲間の数や売上高・利益高のスケールが、年を追うごとに巨大化していきました。そのため、世代交代などのタイミングでひとつ上のステージの組織へと生まれ変わり、世の中に対する企業の存在価値をさらに高めていきたいと考えるようになりました。
そんな私の思いとリンクするように、樗澤もセミナーで田瀬さんのお話に真剣に聞き入っていて、その姿に「樗澤ならナカジツを次のステージに引き上げてくれる」と確信を持つことができました。
樗澤社長:
お恥ずかしながら、田瀬さんのセミナーを拝聴するまでSDGsのことを知りませんでした。一方で自分が鳥居から社長職を引き継ぐにあたって、2人の中では「会社を新たな形にしたい」という思いがあったのも事実。田瀬さんとの交流を通じてSDGsのことを深く知るごとに、「SDGsで社会に貢献して世の中をより良いものにすることで、企業も新たな価値を創造できるのではないか」と考えるようになりました。就任のタイミングと合致したのも、幸運のひとつかもしれません。
田瀬様:
セミナーを受けてSDGsに興味を持っていただき、さらに会社一丸となって取り組もうと思ってくださる。これほど講師冥利に尽きることはありませんね。
そんなナカジツ様が、先日の社員総会でこんなSDGs宣言を出されました。
ナカジツSDGs宣言
田瀬様:
詩的でもあるし、自分の思想、スピリットが出ている素晴らしい宣言だと思います。この中には、お2人の、さらにはナカジツ様全体の、どのようなこだわりが詰まっているのでしょうか。
樗澤社長:
私が思い入れを持っているのは、「あんしん あんぜんが守られた世の中へ 強くてやさしい世界一の”カイシャ”を目指すナカジツが変えていきます」という部分です。これは「業界の常識を打ち破る 不動産市場のチェンジ・エージェント(改革の推進者)であれ」という我々ナカジツの掲げるミッションとも共通するところがあります。
現在思い描いている改革は、「不動産業界をオープンなものにする」こと。現在の不動産業界では、世間の信頼を損なう、あってはならないことがたびたび起こっています。そうしたお客様や関係者をだますような不正が一切無いオープンな環境に業界を導いて、安心安全な世の中をつくっていきたいと強く思っています。
また、「強くて優しい世界一の会社」という部分も、理想の実現に不可欠な要素。人に手を差し伸べるには、まず差し伸べる側が強くなくてはいけません。組織であれば、確実に売り上げて利益をしっかりと確保していないことには他人を助ける余裕を持つことができません。そして売上・利益が立つには、サービスが世の中に受け入れられ、認められていることが不可欠です。「強い」ということは、「周りの方々から認められている」から成り立つことだと考えています。
さらに一緒に働く仲間たちが「世界一になってみせる」と考えながら働くことで初めて、本当に世界一を狙うレベルのサービスを目指すことができます。加えて、働いている仲間が「ナカジツは世界一の会社なんだ」「仲間の安心安全が守られている会社なんだ」と思える会社であってほしいという思いも込められています。
鳥居会長:
私もこだわったところは枚挙にいとまがありません。あえて大和言葉であるひらがなを多用しているところも気に入っています。そんな中でも一番好きなのは「あらゆるひとがいつまでもわらって暮らせる世の中へ」という部分。「笑って暮らせる世の中」をナカジツがつくる。そのためには一人ひとりの個性を尊重しながら、その中にある“遊び心”を大切にして自分らしさを発揮してほしい。「ワクワクするような暮らしができあがるんだ」という意味が込められた、読んでいて使命感や高ぶりを感じる文章だと思います。
田瀬様:
一人ひとりの内側から湧いてくるワクワク感など、遊び心を大切にされているのですね。だからこそ、現在のような組織の強さにつながってきたのでしょう。このような遊び心は昔から大切にしていたのですか。
鳥居会長:
そうですね。ナカジツでは「Asobi-リノベ」「Asobi-創家」「Asobi-デザインハウス」「Asobi+」といった事業を扱っているのですが、これら3つの事業には必ず“遊び”が含まれています。この“遊び”の定義は「一人ひとりの中にある遊び心を大切にする」。大好きなものに囲まれた暮らしはとてもワクワクするものです。その「大好きなもの」は人それぞれ違うものなので、十人十色の多様な個性を活かした住まいづくりを目指しています。
樗澤社長:
まだ現在のように言葉にはなっていませんでしたが、遊び心を大切にする意識は私が入社した当時から存在していました。このシリーズのネーミングを考案した際にも、「改めてお客様に何を訴えかけるか」という部分をしっかりと見つめ直し、言葉を絞り出して考え抜きました。
田瀬様:
個性や自分らしさを「遊び心」という形で表現するのは、とてもユニークで面白いですね。SDGsの宣言としてとても良いと思います。
SDGsは、すべての人が自分らしく生きられる世の中を目指すものです。そういう意味では、ナカジツ様の会社の方針と、国際社会が10年後、20年後に目指している社会のかたちはかなり近いものだと思います。また「ナカジツの仲間たち」という表現も素晴らしいです。“従業員”や“社員”と言わず、あえて“仲間たち”と言っているのも素敵だと思います。ぜひとも、仲間であるみなさんの目に触れやすいところに掲げて親しんでいってもらいたいですね。
樗澤社長が考える「品質の向上」とは?
田瀬様:
ナカジツ様が「どのように利益を得ているか」という構造と、「どのように社会に価値を創出しているのか」とをまとめた「価値創造モデル」について伺います。「人財の質を高める」「働き甲斐を追求する」「サービス基盤を強化する」「未来へ投資する」の4つを重点的に取り組む分野として掲げ、ナカジツ様の仲間、お客様、事業を支える様々な人たちなど全てのステークホルダーが一緒になって、ナカジツ様のあらゆる品質を向上させていく、としています。「品質の向上」をひとつのキーワードにしたことも、価値創造モデルとしてはとてもユニークだと思います。
樗澤社長:
「品質の向上」という点は、私が日頃から一番強く思っていること。先ほどの「業界を変える」というミッションにおいても、私たちの品質が業界の基準になることを目指していますし、胸を張れるものをつくっているという自負があります。そして「そのクオリティを伝える力」を持つことや、「お客様に満足してもらう」ことも不可欠。正直なところ、商売の本質とはこの3つ(「品質の向上」「そのクオリティを伝える力」「お客様に満足してもらう」だと思っています。
特に「品質の向上」という点は、私が日ごろから一番強く思っていること。
品質の高さはお客様との最低限の約束ですので、どこよりも優れた品質を目指さなければならない。だからこそ、一番上に掲げているのです。
また、建物の品質という基準は、お客様が実物に触れて初めて全てが伝わるもの。不動産検索サイトのように画一化された情報が並ぶ中では伝わりきらず、検索結果に埋もれてしまいかねません。ですがナカジツはトヨタホーム様との土地取引件数日本一や、お客様満足度・東海エリア第1位など、社外からの評価でも様々な面で質の高さを評価いただいており、そうした実績で差別化を図れることも強みのひとつでしょう。
また、お客様が不動産取引のプロと建築のプロの両方からサービスを受けられるのも他社にはないポイント。不動産取引のプロは、「宅地建物取引士」の資格保有者。購入物件の条件設定から引き渡しまで、不動産取引に関わる手続き全てを熟知したスペシャリストです。そこに建築の専門知識に精通したエキスパートが加わることで、お客様は建物のことと取引のこと、どちらも十分な説明を受けて納得したうえで安心安全に購入することができる。さらに修繕などでも、同じような修理の過去案件を参考に金額を算出してしまうと、正しい査定ができません。細部まできちんと診断し、「この部分は修繕が必要なほど傷んでいない」といった正確な査定を積み重ねていくことで、透明性の高い査定額を算出することができます。これもサービスの質を向上させるひとつの手法です。
田瀬様:
鳥居会長は価値創造モデルをどのように感じていますか?
鳥居会長:
目標が“品質”という具体的なものに絞られているため、見た人もわかりやすく、それを伝える人も他人に示しやすいと感じます。どんな部署でも品質を向上させることで改善できるサービスや事業が存在します。このモデルをそれぞれの部署に合わせて落とし込めば、すべての仲間たちの目標設定になる。応用のしやすさが一番のポイントではないでしょうか。
また品質を向上させていくプロセスは、まさにナカジツの根底にある「内部の活性化こそが外部への発信力を高める」という思いと同じもの。取り組み分野である「人財の質を高めていく」「働き甲斐を追求する」「サービス基盤を強化する」「未来へ投資する」。社内基盤や内部の環境を改善していくことで、品質は向上していくのだと連想させてくれますね。
そして向上していく先には世界一という到達ラインがある。その世界一を目指すためには、ただ画一的にルールや法律があってそのルールに則っただけの住宅を建てるのではなく、そのエリアごとに住む人たちがワクワク・満足できる住宅を建てていく。それが本来の品質のあるべき姿だと確信しています。
田瀬様:
「買った人がずっとワクワクしながら住めるように」というのは、売る側も情熱を持っていないとできないのではないかと思います。
そんな意味でも、価値創造モデルの“品質”という中に、内面的な意図まで含まれているのがとてもSDGsらしく、これが鳥居イズムなのではないかと感じます。鳥居会長からバトンを渡された樗澤社長から見て、鳥居イズムとはどのようなものですか?
樗澤社長:
鳥居は伝え方、言葉の選び方がとてもうまい。私も就任以降、社長としてメッセージを発信することが多くなりました。同じ立場に立って実感しましたが、例えば社内に「お客さんにこういうものを届けたいから、こういう風にしていこう」と発信するとき、鳥居の言葉は仲間たちの共感を呼び内部への浸透がとても早い。それが鳥居の人柄・カリスマ性なのだと思います。
私はそうしたタイプではないかもしれませんが、仲間と協力しながら一緒になって新たなナカジツをつくっていきたい。私はこれまでどんな場面でも、多角的に考えながら物事を進めてきたという自負があります。仲間たちにも、考える楽しさを知ってもらえたらと思います。